2026.04 icoi Lounge MUSIC コラム
「色のない春」の輪郭
春は、少し曖昧なかたちで始まるのかもしれません。
まだ風の冷たいドイツの郊外では、4月になると「クラインガルテン」と呼ばれる小さな家庭菜園や畑に、人の姿が戻ってきます。
ドイツではこの時期の不安定な空模様を「Aprilwetter(4月の天気)」と呼びます。長い冬のあいだ凍っていた土がゆるみはじめ、じゃがいもやハーブを少しずつ植えていく季節。
けれど天気はとても気まぐれで、晴れたかと思えば急に冷え込み、遅霜が降りることも珍しくありません。
それでも人々は空の様子を気にしながら、少しずつ手を動かしていく。うまく育つかどうかは、その年次第。
それでも毎年、この時期になると同じように土に触れる。
そんな繰り返しが、春のはじまりになっています。
またイギリスでは、春になるとオークとトネリコの芽吹きを見上げて、その年の天候を占う言い伝えがあります。
オークが先に芽吹けば乾いた夏に。トネリコが先なら雨の多い夏になる。どちらが良いとも言い切れない、暮らしによって受け取り方も変わるような、曖昧な予測。
当たるかどうかもわからないまま、それでも人は春の空を見上げて、「今年はどんな季節になるだろう」と、少しだけ先のことを思い描く。たぶん人は昔から、確かな約束がなくても、冬を越えたこの季節に「これから」を想像してきたのでしょう。
ここ北海道でも、春はゆっくりと輪郭を取り戻していきます。
雪はすっかり溶けて、土やアスファルトの色が戻ってきたけれど、まだ花も、鮮やかな緑も見えない。
どこか色を失ったような景色のなかで、それでも空気だけが少しやわらいでいる。
この先、どんなふうに色づいていくのかは、まだわからない。
けれど、その"わからなさ"ごと、春の中に置かれているような気がします。
『Our Day Will Come / Ruby And The Romantics』。
近年では Amy Winehouse も取り上げたこの曲も、最初から今の軽やかなかたちだったわけではありません。
1963年に発表されたこの楽曲は、もともとスローテンポのバラードとして制作されていました。
けれど、メンバーの提案によってテンポが上げられ、当時まだ新しかったボサノバのリズムを取り入れたことで、あの軽やかなグルーヴが生まれたと言われています。
結果、全米チャートで1位を記録するヒットに。
少しだけ、軽やかに。
その小さな変化が、この曲の未来をひらいたのかもしれません。
これまでの誰かも同じように、少し迷いながら、空を見上げて、
それでも自分なりの春を選んできた。
迷うことも、きっとあると思います。
でも、そのままでもいいのかもしれません。
すぐに何かを決めなくても、
少しだけ先のことを思い浮かべるだけでも。
そんな時間も、たぶん、春の一部なんだと思います。
まだ色の少ないこの季節に、うっすらと混ざりはじめる、
やわらかな気配。
あなたの春もきっと、静かに、やさしく、動き出しています。
まだ風の冷たいドイツの郊外では、4月になると「クラインガルテン」と呼ばれる小さな家庭菜園や畑に、人の姿が戻ってきます。
ドイツではこの時期の不安定な空模様を「Aprilwetter(4月の天気)」と呼びます。長い冬のあいだ凍っていた土がゆるみはじめ、じゃがいもやハーブを少しずつ植えていく季節。
けれど天気はとても気まぐれで、晴れたかと思えば急に冷え込み、遅霜が降りることも珍しくありません。
それでも人々は空の様子を気にしながら、少しずつ手を動かしていく。うまく育つかどうかは、その年次第。
それでも毎年、この時期になると同じように土に触れる。
そんな繰り返しが、春のはじまりになっています。
またイギリスでは、春になるとオークとトネリコの芽吹きを見上げて、その年の天候を占う言い伝えがあります。
オークが先に芽吹けば乾いた夏に。トネリコが先なら雨の多い夏になる。どちらが良いとも言い切れない、暮らしによって受け取り方も変わるような、曖昧な予測。
当たるかどうかもわからないまま、それでも人は春の空を見上げて、「今年はどんな季節になるだろう」と、少しだけ先のことを思い描く。たぶん人は昔から、確かな約束がなくても、冬を越えたこの季節に「これから」を想像してきたのでしょう。
ここ北海道でも、春はゆっくりと輪郭を取り戻していきます。
雪はすっかり溶けて、土やアスファルトの色が戻ってきたけれど、まだ花も、鮮やかな緑も見えない。
どこか色を失ったような景色のなかで、それでも空気だけが少しやわらいでいる。
この先、どんなふうに色づいていくのかは、まだわからない。
けれど、その"わからなさ"ごと、春の中に置かれているような気がします。
『Our Day Will Come / Ruby And The Romantics』。
近年では Amy Winehouse も取り上げたこの曲も、最初から今の軽やかなかたちだったわけではありません。
1963年に発表されたこの楽曲は、もともとスローテンポのバラードとして制作されていました。
けれど、メンバーの提案によってテンポが上げられ、当時まだ新しかったボサノバのリズムを取り入れたことで、あの軽やかなグルーヴが生まれたと言われています。
結果、全米チャートで1位を記録するヒットに。
少しだけ、軽やかに。
その小さな変化が、この曲の未来をひらいたのかもしれません。
これまでの誰かも同じように、少し迷いながら、空を見上げて、
それでも自分なりの春を選んできた。
迷うことも、きっとあると思います。
でも、そのままでもいいのかもしれません。
すぐに何かを決めなくても、
少しだけ先のことを思い浮かべるだけでも。
そんな時間も、たぶん、春の一部なんだと思います。
まだ色の少ないこの季節に、うっすらと混ざりはじめる、
やわらかな気配。
あなたの春もきっと、静かに、やさしく、動き出しています。